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二度ある事は三度あるためには、まず二度目がなければならないのだが

いままで、こんなに切ない思いで花火を見たことはなかった。雲一つない空に広がる色とりどりの花火。「ドンッ」という轟音が体を震わせ、空を見上げれば光の粒が降り注ぐようにすら見える。いつも、こんな風景を見る時には、隣に大切な人や、仲間がいた。今年に限っては、隣には誰もいない、、、、

な〜んて事はなく、隣にはマダム斉藤がいたのだ。
「売って、売って、売りまくるのよー!あと1時間しかないんだからね!」
彼女の叫びに呼応するかのように我々も声を上げる。
「フレッシュ寿司—」
「カレーライスー」
フレッシュじゃない寿司なんて怖くて食えるか! と心の中で叫びつつ、高速で注文された品を皿に盛っていく。自分で言うのもなんだが、自分の隠された才能を開花してしまったようだ。世界選手権とかがあったら、優勝してしまうかもしれん。ふふん。

そんなにいっぱいお客来なくたっていいよー、どうせ給料変わらないんだから、もっとラクしようぜー、なんて思ったって、そんなのはマダム斉藤には通じるわけもない。もちろん客にも通じない。それに、日本人的性格が災いしてか、自分に与えられた仕事はきっちりこなそうとしてしまう。もちろん、それ自体はいい事なのだが、なんだか、そんな性格をしている自分を不条理に恨んでみたりする。う〜む。

土曜日の午後2時。空には少しの雲があり、夏の熱い太陽から我々を少しだけ守ってくれていた。
「よろしくおねがいしまーす」
最初は気楽なもんだった。一緒に働いていた日本人の女の子とも、
「なんか、文化祭とかそんな感じじゃない?懐かしいよね」
なんて軽口を叩きつつ、仕事をしていたものの、
「でも、もう少ししたら忙しくなって無口になっちゃうかもよ」

はたして、その予言は実現した。仕事開始後、3時間。時計の針は午後5時を指していた。忙しい、忙しい。ひっきりなしに寿司だのカレーだの、餃子だのを求めに来る客の列。しかも、こんなに長い間立ちっ放しってのも久しぶりだったから、腰も痛くなってきた。そんな頃だった、鍋の底が見えてきたのは。
「ねえ、これが全部売れたら、今日の仕事終わりなのかな?」
「ああ、そうかもね。結構ゴールは近そうじゃない?」
そこにマダム斉藤がやってきて、
「あとどのくらいあるの?」
「このくらいです」と言って鍋を見せる。おそらく、その言葉には、期待というか、喜びが満ちあふれていたに違いない。その鍋を見たマダム斉藤はバッグから携帯を取り出し、
「もうすぐなくなっちゃいそうだから、追加持ってきてよ!」
愕然とする二人。30分ほどして、振り出しに戻った事に気づく二人であった。

そこから5時間。ひたすらカレー、焼きそば、チャーハンなどを盛り、餃子と春巻きを皿に乗せていく。もはやマシーンだ。多機能すぎる! 洗濯乾燥機なんて、洗濯と乾燥の2つしか出来ないじゃないか! なんて思って勝ち誇ってみたりする。むなしい。ひたすらむなしい。

「これを全部デラウェア川に投げ込んじゃったら、今日の仕事終わりじゃない?」
なんて悪い考えがあたまをよぎり始めた午後9時頃。8時から始まったコンサートは盛況のまま幕を閉じ、そのイベントのクライマックスともいえる花火が打ち上がり始めたのはその頃だった。

すいませーん、テントが邪魔で花火がよく見えないんですけれどもぉぉぉ。。。。ああぁ、仕事しながらでも、横目でちらちらと楽しめそうな花火すらも楽しめないのか。おのれの身の不幸を嘆くより他になし。

というわけで、土、日と二日間に渡って馬車馬のように、あるいは、回し車の中に入れられたハムスター(こっちの方がイメージに近いか?)のように働いてしまった。働いている姿を見にきてくれた皆さんありがとう。でも、僕もそっちがわで、なんか食べながらビールが飲みたかったっすよ。

しかし、マダム斉藤の最後の言葉が気にかかる。
「また、なにかあったらお願いするから」

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